「河豚は食べたし命は惜しし」ふぐってどんな魚?【ふぐの種類】
フグ科魚類は両顎(りょうあご)に4枚の歯を持つのが特徴で、学名もこれにちなみます。体は小棘でおおわれるものもいますが、ハリセンボン科魚類のような強い棘ではありません。背びれには棘がありません。世界では26属約180種、日本には7属53種が分布しているといわれています。海水域にすむもののほか、海水にすみ汽水域に入るものや、一生を淡水域で暮らすものがいます。淡水域つまり河に住んでいるところから河豚の河の字が使われているそうです。この科に含まれる魚の殆どすべてが有毒で、ヒトを死に至らしめるような強い毒を持つものもおり、素人料理は禁物です。また皮膚から毒を出すものもあり、他の魚と飼育していると、他の魚を殺すこともあるようです。それでもキタマクラ属のものやモヨウフグの仲間など色彩が美しいものも多く、観賞魚として人気があります。一部の種は淡水の熱帯魚として販売されていますが、中には汽水域に生息する種類もおり、そのような種類の飼育には塩分があるといいでしょう。
「河豚は食べたし命は惜しし」ふぐってどんな魚?【ふぐの王様とらふぐ】
ふぐは食用に向くもの向かないものとあります。食用ふぐの中でもやはり「とらふぐ」は特別でしょう。食用として取引されるフグの中では最も高級です。ふぐの刺身といえば、「とらふぐ」が主に使用されます。ふぐは白身魚のなかでも、さらに脂質が少ないという特徴を持ち、繊維質であるため肉質は弾力が強く、普通の刺身の厚さに切ると噛み切ることに苦労するため、ふぐ刺しでは適度な歯ごたえ、食感を得るため薄く切って盛り付けます。その際に使用するのが専用の「ふぐ引き包丁」です。ふぐ料理人の創意工夫により様々な美しい盛付が考案され、見るもの・食すものを魅了させます。盛付の種類には、平たく円盤状に満遍なく並べる「べた盛り」が一般的ですが、「鶴盛」「菊盛」「孔雀盛」「牡丹盛」などもあります。ふぐは、毒を持ち「あたると死ぬ」という例えから関西ではフグのことを「鉄砲(テッポウ)」と呼び、ふぐ刺しを「テッポウ刺し」を略して「てっさ」と呼びます。
ふぐ毒は、どんな調理方法(煮たり、焼いたり、塩でもんだり、水でさらしたり)でも消えませんので、決してご自分でさばいたりせず、必ずフグ取扱資格者がいるお店でお召し上がりください。フグ調理師の免許や資格は各都道府県が個別に定めているため、特段の定めのない限り当該都道府県内のみでしか通用しません。 ですから、山口県のふぐ処理師免許証がなければ、山口県ではふぐは扱えません。山口県では昭和56年にフグの販売および処理の規制に関する条例が改められ、 ふぐ処理師免許・ふぐ処理施設届出証を揚げたお店の、熟練と知識によって美味しいふぐが食べられるようになりました。
「ふぐ」はいつから食べられてたのか?
縄文時代の古代人もふぐを食べていた事が、遺跡からも証明されています。下関では安岡にある潮待貝塚から二千年以上前のものと推定されるふぐの骨が発見されました。ふぐは、はるか昔から食べられていたようです。中国では秦の時代に「フグを食べると命を落とす」という記述のある書物も存在しています。
江戸時代には、松尾芭蕉や小林一茶がふぐを季語にした俳句を残しています。
あら何ともなや きのふは過ぎて ふくの汁 河豚汁や 鯛もあるのに 無分別
これは松尾芭蕉の句。(※リンク:ウィキペディア)
五十にて 河豚の味を 知る夜かな 河豚食わぬ 奴には見せな 富士の山
これは小林一茶の句。(※リンク:ウィキペディア)
日高本店が取り扱っているふぐの種類別、可食部位
ふぐの種類 | 筋肉 | 皮 | 精巣 |
トラフグ (虎河豚) | 〇 | 〇 | 〇 |
マフグ(真河豚) | 〇 | × | 〇 |
ゴマフグ | 〇 | × | 〇 |
シロサバフグ | 〇 | 〇 | 〇 |
トラフグってどんなふぐ? トラフグ
Takifugu
rubripes (Temminck and Schlegel, 1850)
形態・特徴 | 全長70cmにもなる、トラフグ属中では特に大きくなる種。大きく、白く縁取られた黒色斑とそれに続く黒色小斑が特徴。幼魚のうちは白色斑がある。カラスに似るが、トラフグの臀鰭は白色、もしくは赤みをおびるのに対し、カラスは暗色。 |
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分布 | 北海道~九州までのほぼ日本各地沿岸。~サハリン、沿海州、朝鮮半島、済州島、中国、台湾。 |
生息環境 | やや沖合に多い種であるが、幼魚のうちは沿岸域にも多い。河口にも姿を見せる。 |
食性 | 肉食性。甲殻類、小魚、貝類などを食べる。 |
その他 | 産卵期は春季から初夏とされ、卵は沈性粘着卵。本種はふぐ料理として重要な種であるが、卵巣や肝臓などに強い毒があるので、調理はプロに任せること。延縄や底曳網で漁獲される。山口県下関が産地として有名で、ほか九州などでも水揚げされる。現在は養殖も盛んに行なわれる。 |
マフグってどんなふぐ? マフグ
Takifugu
porphyreus (Temminck and Schlegel, 1850)
形態・特徴 | 胸鰭後方に大きな暗色斑があること、体表に小棘がないことでナシフグに似るが、本種では胸鰭後方の暗色斑が白色の模様で縁取られないことから区別できる。トラフグやカラス、ナメラダマシでは背部、腹部に小棘がある。 |
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分布 | サハリン以南の日本海、北海道以南の太平洋岸。黄海、東シナ海。 |
生息環境 | 沿岸域から大陸棚縁辺に生息する。 |
食性 | 肉食性で甲殻類や軟体動物を捕食する。小魚も食べる。 |
その他 | 本種は卵巣、肝臓、皮膚などに毒がある。筋肉は無毒とされるが、調理はプロにまかせること。別名ナメラフグと呼ばれ、東シナ海北部と黄海に分布するナメラダマシと似るが、ナメラダマシでは背部、腹部に小棘があるのに対し、本種ではそれがない。 |
ゴマフグってどんなふぐ? ゴマフグ
Takifugu
stictonotus (Temminck and Schlegel, 1850)
形態・特徴 | 体は比較的細長い。背・腹面に小棘があることでショウサイフグと区別可能。体側背部には小さな斑点がある。 |
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分布 | 北海道以南の日本海岸、北海道~土佐湾までの太平洋岸、瀬戸内海、東シナ海沿岸。~朝鮮半島、済州島、黄海、ピーター大帝湾。 |
生息環境 | 沿岸からやや沖合に生息する。 |
食性 | 肉食性。 |
その他 | 卵巣と肝臓に強毒がある。筋肉と精巣は無毒とされるが、調理はプロにまかせること。 |
シロサバフグってどんなふぐ? シロサバフグ
Lagocephalus
spadiceus (Richardson, 1845)
形態・特徴 | 胸鰭は暗色ではない。背部に小棘があるが、この棘は胸鰭先端の前方にしか達しない。鰓孔は白い。体側に目立つ斑紋がないことでクロサバフグを除く日本産サバフグ属の他種と区別可能。クロサバフグとは尾鰭が湾入する、もしくは弱い二重湾入になることで区別可能。体長30cm前後。 |
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分布 | 鹿児島県以北の日本沿岸、東シナ海。台湾、中国沿岸。 |
生息環境 | 中層遊泳性。沿岸域から沖合にかけて見られ、クロサバフグよりも沿岸性とされている。 |
食性 | 肉食性。甲殻類、軟体動物などを捕食する。小魚も捕食し、ルアーでも釣れるという。 |
その他 | 産卵期は九州では5~6月とされている。卵は粘着物層をもつ沈性卵。釣りや底曳網で多量に漁獲される。 本種はLagocephalus wheeleriの学名で報告されていたものだが、この学名はLagocephalus spadiceusのシノニムとされた。 日本産の個体による中毒例はないものの、東南アジアや南シナ海産のものは有毒とされており、同定や調理はプロに任せること。 |